田代 ゆかり

  • 版画

作品

CV

■経歴
2020年 福岡教育大学 教育科学専攻 大学院教育創造コース 修了

■受賞
2019年 第44回全国大学版画展 優秀賞
2020年 第16回CWAJ (カレッジ・ウイメンズ・アソシエーション・オブ・ジャパン) ヤング・プリントメーカー賞(一席)
    第45回全国大学版画展 優秀賞・観客賞
2021年 NPO法人芸術・文化若い芽を育てる会 スポンサー賞 
2023年 第21回アートギャラリーホーム作品募集 審査員特別賞

■学会発表
2019年 第58回大学美術教育学会 ポスター発表「紙式メゾチントの教材開発」
2020年 第59回大学美術教育学会 口頭発表「紙式メゾチントの教材開発」

■掲載
2021年 第49回版画学会会誌 査読研究報告掲載「紙式メゾチント技法の開発」 P84~91
2021年 ギャラリー2021 Vol.10 通巻438号 株式会社ギャラリーステーション 作品掲載 P95

■個展
2023年 4月25日~4月30日 田代ゆかり展 会場:JINEN GALLERY (東京)

■展示
2022年
1月12日~1月17日 時津画廊「現代版画2022」 会場:福岡三越美術画廊
2月14日~2月26日 画廊選出「版画展セレクション」 会場:ギャラリーなつか(東京)
3月24日~3月30日 八犬堂「Artglorieux」 会場:GINZA SIX(東京)
12月19 日~12月26 日 WATOWA ART AWARD 2022 EXHIBITION 会場:WATOWA GALLERY

ステートメント・PR

 作品のモチーフである夜景を描き始めたきっかけは、失恋した知人からふとでた「彼女の家の近くのインターとか通り過ぎるだけでつらい。」という言葉からである。
同じ景色も見る時の思い出で変化して見えるのだと気付いた。夜景は場所により異なるがどこか似通っている。それゆえに自分の思い出を当てはめ、各々の思いに馳せるのではないだろうかと考えた。夜景は年代や性別を問わず、様々な思いを湧かせることができる。また、作品内にある丸い滲みの表現は、涙を溜めて見た光を描いている。滲みの表現は自身で開発した紙式メゾチント技法1の特徴である。
 作品の多くは地元の福岡市内の夜景を取り入れている。しかし、鑑賞者から「隅田川の近くにあるホテルに泊まった時に見た景色を思い出す。」「コロナ禍前、ときどき時間を忘れて楽しくお酒を飲んで真夜中の帰り道、その時見た景色に似ている。」「高速バスにのって、首都高を走っているときのことを思い出した。」と様々なエピソードをもらう。鑑賞者は同じ夜景ではなくとも、どこか似た夜景から過去の経験や記憶を思い出せるのだと分かった。私はこの感情を題材に画像1枚目《あなたが“いいね”をした。》を制作した。窓から見る夜景を共有し、思い出す心情を描いた。前後関係を分かりやすくなり、鑑賞者は制作者の視点を共有できるのではないだろうかと考えた。
 この作品は車の中から見た福岡県香椎浜の夜景である。助手席に座る筆者は携帯電話を扱うことが多い。しかし、この日は目の前に流れる景色を写真に撮り、SNSに投稿した。筆者はSNSを通して共感(いいね)をもらった。
 このように2022年は鑑賞者の視点を意識し構想した。2023年の制作では視点に加え視野、視座を合わせて構想をしていきたい。

1.田代ゆかり、「紙式メゾチント技法の開発」、『版画学会誌』、第49号、2021年。


■自身の表現手段である版画技法の開発について
 伝統的な技法を現代的で簡易的な技法に置き換えることで、通常のメゾチント技法に比べ短時間でありながらメゾチント技法に類似した簡易的メゾチントの開発に至った。メゾチント技法の萌芽的技法を考案したのはドイツ人の Ludwig・von・Siegen(1609~1680)である。メゾチント技法には膨大な制作時間や技術がかかるために19世紀に写真技法の発明により衰退し消滅した。通常のメゾチント技法に比べ短い時間で完成する簡易的メゾチント技法を開発することにした。メゾチント技法が簡易化すれば、高校生や中学生でも理解できる教材として版画の教育普及の一助となる。そして開発したのが紙式メゾチント技法である。この紙式メゾチント技法の新たな点は、版材に耐水ペーパーを用いることで均一な「黒い画面」、製版材料・道具を使い分けることで「明るさの段階」の表現を可能にした。紙式メゾチントの描画方法は凹描画のスクレーパーとバニシャーと凸描画の水性ニス、グロスポリマーメディウム、ジェルメディウムからなる凹凸版画である。メゾチント技法にはない紙式メゾチント技法のもつ特徴はエッジの効かない緩い滲みの明暗である。2020年に勤務先の高校でこの紙式メゾチントを用いた授業を行ない、論文「紙式メゾチントの技法の開発」にまとめている。
当初は授業を行う為の技法開発であったが自身の表現手段にかかせないものになっている。





実行委員コメント

夜景を通して、鑑賞者がそれぞれの記憶や思い出を重ねる。田代さんの作品は10人が見れば10通りの解釈が生まれる。ステートメント一文の「涙を溜めて見た光景」がなんとも叙情的で切なく、その景色は独自の技法で再現されており、実物のディティールを見てみたくなります。車内からみた景色が夜景を切り取る様な構図になっており、記憶の断片、大切な思い出を額に入れる、そんな効果ももたらしている様に感じました。

家入一真 審査員コメント

昔から、高速道路から遠くに見える街やマンションの灯りが好きでした。こんなにもたくさんの、一生出会うことも無いであろう知らない人たちが、それぞれの生活を送ってるのだ。そう考えるだけで、自分という存在の小ささを改めて認識させられると同時に、それぞれの灯りの下にある生活を想像するだけで、現実と幻想の境目にいるような、そんな感覚が好きでした。福岡市内の夜景を取り入れてるとのことで、福岡生まれ・育ちの人間として「これはあそこかな」なんて想像しながら拝見しました。涙による滲みの表現に独自の手法を凝らしていることも、とても面白いと感じました。これからまた新しい構想を考えられてるとのことで、楽しみにしています。

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