伊藤ミナ子

  • 工芸

作品

CV

略歴

2012   石川県立輪島漆芸技術研修所 特別研修課程卒業
2014   京都造形芸術大学(現 京都芸術大学 )芸術学コース卒業
2016   東京藝術大学大学院 美術研究科工芸専攻 漆芸研究分野修了
現在    東京藝術大学 漆芸研究室 教育研究助手 

個展
2018   伊藤ミナ子 漆芸展 -First touch-(東京アメリカンクラブ)
2019   伊藤ミナ子 麗しのうるし展(広尾プラザ)
2020   伊藤ミナ子 漆芸展(ギャラリー田中)
2021   伊藤ミナ子 漆画展(ツム・アインホルン)

受賞
2013  第30回日本伝統漆芸展 日本伝統漆芸展新人賞
2018  Remember Hope Art week フォトコンテスト入賞

雑誌掲載
2022  IMPERIAL 116号 (発行:株式会社帝国ホテル  制作:文藝春秋)

漆に魅せられ、ずっと漆芸作品を制作してきました。漆は彩度の高い色を出すことができなかったり、真っ白な色が出せなかったり、表現上様々な制約が発生しますが、漆が好きなので、漆でできる範囲内の表現を模索してきました。ゆえに漆だからあきらめざるを得なかったコンセプトや表現の作品も数多くありました。

漆で何を表現したいのか、をずっと考えてきましたが、ふと「漆で」の部分を取り、自分は何を表現したいのか、のみを考えてみました。結果、漆が向いているものは漆芸技法で、向いていないものは違う素材で制作することに決めました。2022年より左手には漆刷毛、右手には絵筆の二刀流で活動しています。

ステートメント・PR

世の中では日々様々な“何か”が起こっていますが、その殆どを私達は知らないままです。また人は毎日知らない誰かに支えられて生きていたりもします。この「知らない」というのは少なからず未来の自分に影響を与えていると考えています。知る、知らないの境目を探る中で、作品そのものというより、作品を通して「知らない」ことに触れてもらう場を作ろうと思うようになりました。

作品を作る際に一貫させていることはテーマが何であれ、作品の見た目で負の感情を抱かせないことです。理由は2つあり、1つは心を傷め知らなければ良かったと負の感情に苛まれるより、写真のように直接的ではなくても、まずその事実を知ってもらうことが重要と考えるからです。2つめは提示しすぎないことで、作品に接して興味を持ったことを自ら調べ、理解を深めてもらう余地を残すためです。

今年から環境問題や様々な権利、戦争、現代の社会問題などがテーマの平面を制作しています。金の違法採掘、メタン、人権、治外法権についてなど様々ですが、ここでは蓮根と水が融合したオリジナルのLotus模様を使った3作品を紹介します。

①  Lotus -Oasis-
砂漠のオアシスと言われたチャド湖周辺の情勢がテーマです。この地域は灌漑や気候変動の影響を受けやすいだけでなく、紛争による暴力や貧困、女性の人権問題など課題山積です。人道支援も行き届かない危険な地域ですが長い間解決する気配はなく、今後も忘れてはならない地域の1つです。(材料 漆、鮑貝、金属粉など)

②  Lotus -さまよえる魂-
昨年の日本の自殺者は2万1007人でした。これは生きるのを辞めたくなった人の数であり、死ぬことを望んだ人の数ではありません。「蓮は泥より出でて泥にそまらず」という諺の通り、孤独の中で土に返った人々が、来世で再び花開くことを願いました。円周上にある小さなドットは亡くなった一人一人の魂を表しています。(キャンバスにアクリル)

③  Lotus -Purify-
蓮はモネも描いたように花が注目されますが、その美しい花を泥の中で支え、蓮根として食べられる茎の一生には強烈な力強さを感じます。この見返りを求めないひたむきな生き様にフォーカスをあてたくなりました。作品を見た時、私達も見えない所で誰かに支えられて生きていることを改めて知る(感謝する)きっかけになったらと思います。(材料 漆、金、銀、鮑貝、白蝶貝、木など)

実行委員コメント

漆芸というジャンルでこのようなカラフルな作品ができるのだと思いました。サイトを拝見するとこの青くキラキラしたステンドグラスのような表現は、アワビ貝を埋め込んだものなのですね。器ではなく平面作品の「画材」として漆を使われていることも新鮮でした。ステートメントの「向いていないものは違う素材で制作することに決めました」という言葉に作家としての意欲を感じました

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