伊藤 ミナ子

  • 工芸
  • 絵画

作品

CV

2021年〜東京藝術大学 漆芸研究室 教育研究助手
2016年 東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 漆芸研究分野修了
2014年 京都造形芸術大学(現 京都芸術大学 )芸術学コース卒業
2012年 石川県立輪島漆芸技術研修所 特別研修課程卒業

〈受賞〉
2023年 養浩館庭園「池のほとりのアート展」優秀賞
     NY公募展アートインキュベーション準優秀賞
2018年 Remember Hope Art week フォトコンテスト入賞
2013年 第30回日本伝統漆芸展 日本伝統漆芸展新人賞
2012年 石川県立輪島漆芸技術研修所 卒業制作所長表彰

〈個展〉
2021年 伊藤ミナ子漆画展(ツム・アインホルン)
2020年 伊藤ミナ子漆芸展(ギャラリー田中)
2019年 伊藤ミナ子麗しのうるし展(広尾プラザ)
2018年 伊藤ミナ子漆芸展 -First touch-(東京アメリカンクラブ)

その他、企画展、グループ展、百貨店外商会、ワークショップなど参加多数。
平面から立体、また蒔絵から現代アートまで様々な作品を制作している。

ステートメント・PR

 1940年後半から1950年代にかけて、アメリカのニューヨークを中心に広まった抽象表現芸術、その中でもジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングにインスピレーションを受け、漆で抽象表現の研究をしています。

 漆(蒔絵)作品は図案を決めたらその通りに進めることが多いのですが、もっとジャズのように即興で漆の作品ができないかと思い、制作し始めたのがこのメタモルフォーゼ・シリーズです。メタモルフォーゼ(変容)と名付けたのは、見た時の照明や時間帯(朝日で見るのか、夕日で見るのか)、作品をどの角度から見るか、などによって見え方がガラリと変わるからです。

 写真1枚目と2枚目は昇龍と鳳凰(向かって左が昇龍、右が鳳凰)をイメージして制作した、対の作品を撮影したものですが、1枚目は午前中の部屋全体が明るい時間帯に撮影したものです。彩度、明度等の画像加工は一切していません。一方、2枚目は午後の光の中で撮影したものです。1枚目、2枚目ともに左手に窓がありますが、2枚目の時間帯に作品左側からみると金が強く光って見え、正面からの印象とは大きく変わります。(この時、作品右側から見ると金が抑えられ、色が強く見えていました。)このように照明、見る時間帯や角度によって、画面の表情がガラリと変わるのが特徴です。

 制作方法は、ポロックのポーリング技法をアレンジしています。漆の粘度を調整し、それを筆などは一切使わずに、漆板の上で漆を転がしたり、垂らしたりし、さらにエアーで表情をつけたり金属粉を蒔いたりしました。構図やディティールは決めずに作り始めるため、だんだんと途中で要素が決まっていき、手が動かなくなったら終了、という感じで一気に作っています。制作スタイルは立ったまま、画面全体を眺めながら行います。

 対の作品が金、黒、朱と和のイメージなのに対し、3枚目は洋風なイメージで制作しました。紫を中心としたピンクやブルーを使っていますが、色漆は作業する当日の気温や湿度によって、乾いた時に大きく色の出方が左右されるので、メタモルフォーゼ・シリーズは季節を選んで制作することが多く、この作品も3月を待って制作しました。このちょっとした不自由さが漆ならではの困りどころでもあるのですが、その中にどこか面白さも感じており、寄り添わざるを得ないところです。もちろんこの作品も照明や見る角度によって、金が強く輝いたり、逆に色が強く出たりと見え方が大きく変わり、様々な表情を楽しめます。

素材:漆、金属粉、顔料、木
サイズ:全て 770×620×30mm

実行委員コメント

漆で描く抽象表現というアイデアがユニーク、今年はCEMENT金谷さんが審査員に加わったこともあるのか、金沢、石川から工芸系のアーティスト参加が格段に増えたことも嬉しいトピックでありました。朝昼夜と光や角度で作品の印象が変わって見えるという解説に、漆ならではの特徴を平面作品に落とし込んだことでできたオリジナリティを伊藤さんが図らずとも手に入れた驚きを感じました。実際に原画を見てみたかったです。

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