黄　クリコ

SNSでセルフポートレートの投稿の割合の多さに驚く。まるで自己愛をどのように表現しようか模索しているかのようだ。でもその「美」の基準は社会的期待を反映したものが多く印象は薄い。それにしてもどうしてこんなにセルフポートレイトに多くの人が惹かれるのであろうか。
私はマリア・ラスニック（Maria Lassnig）の「You or Me」に影響されて人物をモティーフに制作し始めた。彼女の作品からは女性心理の複雑さや不安定さを感じる。しかしながらメッセージは非常にストレートで難解なところはなく、例えば家事などの日常からの圧迫感、セクシャリティ、年齢、家族状況など社会構造の問題を提起している。1919年生まれの彼女と年代的に隔たりはあるものの非常に共感できた。
翻って私の作品のテーマは「世の中はそのようなもの」で片づけられてしまうことに対する違和感、西洋的なものの見方で価値が決まりやすいことに対する息詰まり、女性に課せられる社会的期待に対する圧迫感である。
大きな悪ではないのだけれど、根本的な社会構造が変化しない限り変わらないものに対するメッセージである。
アートはメッセージだと思っている。そして、そのメッセージによって気づきがあり、最終的には「より良い場所を生み出す変化を起こすこと」こそがアートのチカラなのだと思う。