吉田貴紀
作品



栃木県出身
青山学院大学文学部第二部 英米文学科卒業
2007年 東京写真学園レベルアップフォトレッスンコース終了
2010年4月より2014年3月まで 写真家 松本路子氏のワークショップに参加
受 賞 歴
2010年05月 『写真の日記念 公募による写真展』自由作品部門 入選
2013年09月 「Vintage books #1」「Vintage books #2」が『INTERNATIONAL PHOTOGRAPHY AWARDS 2013』Non-professional still life部門 佳作
2015年02月 『御苗場 vol.16 横浜』エプソン賞
2016年02月 『御苗場 vol.18 横浜』テラウチマサト 氏セレクト ノミネート、エプソン賞ノミネート
2017年01月 写真展『アートの共演 2017睦月』フレームマン賞
2018年10月 「A town reflected in the window」が『INTERNATIONAL PHOTOGRAPHY AWARDS 2018』Non-professional Architecture: Cityscapes/Urban部門 佳作
2020年01月 写真展『アートの共演 2020明春』G.I.P. Tokyo賞
2020年05月 『御苗場 vol.26』林紗代香 氏セレクト ノミネート
2021年03月 写真展『アートの共演 2021風花』M84賞
展 示 歴(個展のみ)
2010年01月 「世界パズル」ギャラリー・ニエプス(東京・四谷)
2011年11月 「本の街から」本と街の案内所 (東京都・神田神保町)*2011年11月から2012年6月までの約8ヶ月間の展示
2015年04月 「本と物語、または時間の肖像」森岡書店 (東京・茅場町)
2018年07月 第11回「手業展」同時開催「福岡陽子写真展『Biblioscenery / ビブリオシナリー』」Gallery幹 (京都市中央区)
2018年08月 「Biblioscenery / ビブリオシナリー」友愛診療所 (京都市中央区)
2019年03月 「Biblioscenery / ビブリオシナリー」Art Gallery M84 (東京・銀座)
2021年02月 「G.I.P. Selection 福岡陽子 写真展「見ているきみがぼくなのだ」space2*3 (東京・中央区日本橋本町)
記憶術の一つに「場所法」というものがあります。頭の中にある場所を思い浮かべ、そこに憶えたい物を配置していく、という方法です。その際、場所と物には直接的な関係はありません。私の作品も「記憶術」のように、ある場所の写真に、それとは関係のない物事が組み合わされています。コラージュに使う写真を選ぶ際には、同時に見せることで被写体に意味を付加しない、またイメージ同士に共通項がない、そういったものを選ぶようにしています。そうして出来上がるのは、日常的でありながら、どこにもない風景です。見ていると、何かを思い出しそうで思い出せない時のような感覚に陥ります。つまりこれらは記憶の中間地点の景色だと言えます。
またこれらの作品では、イメージに強いメッセージを持たせることをあえて避けています。喜びや怒り、孤独や悲しみなど、強い感情を伴う表現は人を惹きつけます。そのため普段目にするメディアの多くが、人の感情を揺さぶるように作られています。しかし私はそのようなものを見るのに疲れました。実際、多くの方が同じように感じているのではないかと思います。だから自分の作品では、見る人の感情をニュートラルな状態に戻すような表現を目指しています。刺激の強い、情報過多の日常から離れて、チルアウトできる場を作品の中に作りたいと思ったのです。
技法について
プリントには写真用紙ではなく、上質紙を使用しました。インクジェットプリントした写真にパウダー状の蝋を振りかけ、アイロンで熱を加えて溶かします。すると蝋が染みこみ、紙が半透明になります。そのようなプリントを2枚重ねると、下に置いた画像が透けて見えます。この効果を利用して、写真を使ったコラージュ作品に仕上げました。写真は私が長年撮影してきたものの中から選びました。
プリントに蝋を染み込ませるという技法は、もともとは写真のオブジェとしての側面を強調する手段として考えついたものです。今日では写真はプリントされず、大抵の場合モニター上の画像だけで終わってしまいます。しかし私は紙にプリントされた写真に一番愛着を覚えます。手の触れられないイメージが、物質化している不思議を感じるからです。蝋引きにより歪んだプリントは、写真が画像情報であるだけではなく、物質であることを実感させます。
インクジェットのプリントに蝋を染み込ませ、熱を加えることで半透明になる、それを重ねることで既視感のある風景が、どこか違う世界に連れて行ってくれる。オリジナルな手法(しかもとてもアナログな)を見つけ、それを作品にしていくクリエイティビティが素晴らしいと思いました。光のある場所でこの作品を見てみたいと思いました。
知っているようで知らない場所。思い出せそうで思い出せない。だからついずっと眺めてしまう。ゆるくて心地よい、そんな表現に惹かれました。とても面白いです。