作品



大貫仁美 (1987- )
2010 武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科クラフトデザインコース ガラス専攻 卒業
2012 武蔵野美術大学大学院 造形研究科デザイン専攻工芸工業デザインコース 修了
〈主な個展〉
2015 夜とオオカミ (ギャラリー悠玄/東京)
2014 Nowhere (NANATASU GALLERY/東京)
EMPTY (ギャラリー悠玄/東京)
2013 ユートピアという陳腐な言葉 (ギャラリー同潤会/東京)
〈主なグループ展・アートフェア〉
2021 素材転生―Beyond the Material (岐阜県美術館)
2020 清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2020 (岐阜県美術館)
2017 KOGEI Art Fair Kanazawa2017 (KUMU金沢-THE SHARE HOTELS-/金沢)
けだものだもの展 (FEI ART MUSEUM YOKOHAMA/神奈川)
ガレリア青猫のArt&Craft展 (Galleria AONEKO/東京)
2016 Massage 2016 おしゃべりなArt展 (ギャラリー悠玄/東京) ’13
Viewpoint 2016–animalspirit (ギャラリーQ/東京)
第11回三井不動産商業マネジメント・オフィース・エクスビション (浜町センタービル/東京)
2015 The art fair +plus-ultra 2015 (スパイラル/東京)
Japan-Baltic design week MADE IN JAPAN (Kablys、Arts Printing House/リトアニア)
ANIMALS (ATELIER. K/神奈川)
2014 SPIRAL INDEPENDENT CREATORS FESTIVAL [SICF] 15(スパイラル/東京)
2013 TOKYO DESIGNERS WEEK2013 ASIA AWARDS (東京)
2012 平成23年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展 (武蔵野美術大学/東京)
2010 via art 2010 (シンワアートミュージアム/東京)
第3回ガラス教育機関合同作品展 (東京都美術館)
「工芸工業デザイン学科ガラス・金工・陶磁・木工専攻卒業制作展2010」 (スパイラル/東京)
卒業制作・終了制作優秀作品展(武蔵野美術大学/東京)
〈受賞歴等〉
2010 武蔵野美術大学卒業制作 優秀賞
via art 2010 審査員賞、観客賞
2013 TOKYO DESIGNERS WEEK 2013 ASIA AWARDS ヤングクリエイター展 入賞
2020 清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2020 入選
私は「傷」を装飾し「美」に転じさせる金継ぎの技術を倣い、ガラス作品を制作しています。
「傷」を欠陥と呼び、異形と呼び、欲望、もしくは迷いや訴え、情念と呼ぶこともあるのかもしれません。私が金継ぎしているものは物質的なヒビや割れとしての「傷」ですが、それら全てを含んで「傷」と私は名付けています。作品には一貫として「不具性の美」というものが根底にあります。完璧とは違う欠落から生じる美の姿、人が持ちうる様々な隠された「傷」の姿をカタチとして表現したいと日々模索しています。私自身が難聴という見た目では分かりづらい不具を抱えているからこその私的な経験や想いもそこには含まれています。「傷」や「欠損」など本来工芸の世界ではマイナスに見られてしまうものから「美」を見つけていきたいと考えています。
私が素材としているガラスは構造的には液体でありながら個体として存在する不思議な素材です。キルンワークという技法はそうしたガラスのために「型」を作成し、「型」の中にガラスをつめ、窯の中で焼成していく技法です。焼成の渦中でガラスは「型」の中で溶け、意図した「カタチ」になる時もあれば、思いもしない変化をすることもある。液体と個体、そしてそれをカタチ作るための型、窯の中でガラスは溶けながら型の「あいだ」をいったりきたりとしながらたゆとい、偶然性と必然性の「あいだ」もいったりきたりと定まらない。そうしてできたガラスのパーツを金継ぎの技法から着想を得た独自の技術でつなぎ合わせひとつの立体作品にしています。
近年では「女性の衣服」「下着」をモチーフに作品を制作しています。
私たちは衣服によって、自己を表現し、虚栄心や自己顕示欲を満たしています。また衣服によって、自らの「傷」を隠しています。身体的なコンプレックス、老い、記号化してしまう自身に対しての焦り、欲望、情念、思い出、そういったものを衣服の下に隠し私たちは生きています。
またドレスや下着などの衣服は、女性を美しく見せる一方、女性としての役割や概念に縛り付ける拘束着という一面も持ちます。何れにしても、その下にある柔らかな肉体を覆っているものには違いない。
衣服の下の柔らかな肉体、柔らかな心には、必ず隠された「傷」があるのだろう。
薄いガラスで作られた衣服は、金色で継がれた「傷跡」が在ることで、その姿を留めています。
ガラスで制作した「女性の衣服」「下着」によって、人が隠す「傷」を美しく顕在化することを試みたいと日々作品と向き合っています。
壁一面にディスプレイされた、白い女性下着のインスタレーション。ステイトメントによると、それらは全て薄いガラスで製作されたもので、欠けたものに金継ぎを施し「傷」のメタファーとするとのこと。柔らかな女性の肌を包む下着をガラスで作ることにも、それを砕いて継ぎ合わせることにも意味を持たせる。傷や欠陥にも美をもたせるという大貫さんのテーマが繊細に表現された作品だと思います。