Inoken

  • グラフィックデザイン

作品

CV

子供の時から絵を描くのが好きだったイノケンは、幸いな事に双子の弟がいたので、毎日飽きもせず二人で絵を描いては競い合っていた。当時は毎日のように渓流釣りに連れて行ってもらい、そこで見た原風景の絵を弟と描くようになる。[岩、水、草木、空の混ざり合い方]がこの世の全てのような錯覚を覚えると同時に、自然美の優雅さに感銘を受け、以後弟と「俺的な理想の風景画」という謎のテーマで空想の渓流スポットの絵を描きまくる少年時代を過ごす。
小学生時代、周りはジャンプ派ばかりだったので、アンチマジョリティな少年イノケンはサンデーを読み始め、当時連載中であった皆川亮二の『ARMS』の映画のような描写に衝撃を受け、模写しまくる日々を送る。
中学に上がるとスケボー漬けの日々を送り、当時よく見ていたアメリカのスケートビデオ『411video magazine 』にまたもや感銘を受け、スケートと同時に、スケートビデオ撮影にハマる。その時にストリートカルチャーにどっぷり浸かり、スケートスポットを探して夜遅くまで街を滑り倒す生活を送る。ステア、ハンドレール、レッジ、カーブが街のどこかしらに隠れており、それを見つけては興奮していたのだが、次第に少年時代に[渓流で見た岩、水、草木、空の混ざり方]とストリートのスケートスポットの共通点に気づく。以後、人工美をスケーター目線で楽しむ事となる。
高校時代、美大に行きたいと漠然に思っていたところ、当時の美術の先生に美大の恨みつらみを毎回聞かされうんざりし、普通の大学に進路変更。
大学卒業後は中国に渡り、ファッション関係の仕事をしながら大学で学べなかった宇宙学のさわりを調べていく中で、宇宙の壮大さや、人生の儚さや偶発性を強く意識する。
2019年から自身のアートプロジェクトを始動して、広州や上海での展示や、アムステルダムのアートショップで販売を始める。現在は上海でデザインの仕事の傍ら、レコードジャケット、ポスターデザイン、ブランドへのグラフィックの提供など行なっている。

ステートメント・PR

僕の作品は少年時代に感じた自然美の壮大さや優雅さに対する感嘆に「なぜそれが美しく感じるのか」を分解して解釈して、それを再構築する形で表現しています。再構築の方法としては色や形をリプレイスする事も大切ですが、表現の限定を課す事によって、作品そのものをより多元的に捉えられるようにしています。
例えば、絵を描く際にキャンバスを9×9の格子状に切り取り、その格子の交わる場所に絵のアウトラインを置くようにしています。何故9の格子かというと僕自身、ニコラテスラの369の法則の中で「9という数字は全てを含んだ数字であると同時に0と同じように元に戻る性質を含んでいる」という事に、単に物質世界だけではこの世界を語り尽くせないというニュアンスに共感を感じたので、9という数字を使っています。これは生死観や人生観のアウトプットにも通じると思っていて、人生には偶然というものは存在せず、全ては過去の自分の行動の結果で引き起こされる必然という事を、格子の線と線の交わる位置で何か変化を起こす事で表現しています。
また人間社会や既存の感覚に対する皮肉というものも、織り交ぜています。例えば赤の山水画の絵では日没と日出のグラデーションの現れ方を空と山で分ける事によって、赤く染まる景色を美しいと感じる事に細かい決まりはないというような意図があります。
もう一つの格子の絵は、ロシアの工場の航空写真模した絵です。これは航空写真を見た時に感じた美しさと、工業主義というものは地球に害悪であるが、それに依存する事でしか生きられない人間社会の、不健康な共存状態を暗に表現しています。
最後のラムチョップの絵は、品質の良い肉と悪い肉を「見定めて買うという行為」が、食肉にされた命に対する不平等な扱いなのではないかという事を、四色と五色だけで表現した肉で表しています。これは人間のエゴにフォーカスを当てたメッセージで、これを機に命について考える足がかりになればと思って作成しました。
全てデジタルの作品ですが、デジタルという数学的表現をしてこそ意味のあるものと思っています。紙に出力する際も無機質に出力できるような描写に留めています。

実行委員コメント

■現在、中国上海でアーティスト活動をしているINOKENさん。上海でレコードジャケット、ポスターデザイン、ブランドへのグラフィックの提供などマルチに活躍し、インフルエンサーでもある彼の作品は、程よく力の抜けたポップなグラフィックス。いろんなコラボの可能性を感じます。インスタにある風景シリーズがもっと充実してきたらより面白くなるのではないかと思いました。

■ エントリー作品の3点が作風がそれぞれ違っていたのが残念だったと思います。幾何学模様もKOBE BEEFの作品もとてもセンスを感じますが、説明がポスターやグラフィックに接するときの瞬発力に触ってしまう印象でした。他方、Landscapeや枯山水の庭のアートワークは色使い、構図、描写がストレートに伝わり、観る側にも想像の余白を与えてくれます。そしてカッコイイです!

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