志茂浩和

  • インスタレーション
  • 映像

作品

CV

1960年大阪生まれ。1989年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻中退。
1994年 Sony Music 主催 DEP での受賞を契機に 3DCG を修得。同社よりダリの絵画世界をゲーム化した作品(1997)を発表する。以降、アニメーション制作に取り組み Siggraph などで発表する。神戸ビエンナーレ への出品を機に映像インスタレーションに取り組み、日本文化の発展的継承を基本テーマとしながら観客に現代を俯瞰する視点を提供することを試みている。

■インタラクティブ作品
・1997 「incarnatia 」CD‐ROM アドベンチャーゲーム Sony Music Entertainmennt
 [Prix Mobius International1998審査委員特別賞]
■アニメーション作品
・1999 「Rocket!」[Sillicon Graphics 2000 ClubCharacter+Animation Contest 最優秀作品賞]
・2000 「Hypokeimenon」[Siggraph2000 Computer Animation Festival 入選]
・2002 「MEKARATE」[Siggraph2003 Computer Animation Festival 入選]
・2004 「Beautiful Bad Design」
■作品展示
・CG Carnival 1999・2000・2002 (東京ビッグサイト)
・神戸ビエンナーレ 2007[特別賞]・2009・2015[招待出品](メリケン波止場,東遊園地)
・六本木アートナイト 2018「 挟まる人」(六本木ミッドタウン向かいビルの隙間)
 [第22回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員推薦作品]
 [第 21 回 CS Design Award 準グランプリ]
・六甲ミーツ・アート芸術散歩 2018「向き合う人」(六甲山頂駅)
・六本木アートナイト 2019「囚われる人」(六本木 森ビル周辺)
・道後温泉アート 2019‐2020 「13/8 計画」(道後温泉宝厳寺)
・池袋アートギャザリング 2020「Rain」(東京芸術劇場ギャラリー)
 [豊島区長賞 ・ギャラリー路草賞]
・門司港アートワーフ 2020「雨の碑」(門司港駅構内コンコース)
 [やまなしメディア芸術アワード 2022入選]
・個展(2021/9/9‐14)「虚人」(池袋 ギャラリー路草)
・池袋アートギャザリングセレクト展(東京芸術劇場ギャラリー)

ステートメント・PR

近年、私が取り組んでいる技法は、映像でありながら人の実在感を表現することが可能である。これまでの全ての展示において全員が錯覚することを確認している。「透明な板越しに人が居る」ので、美術に関心のない人であっても引き込むことが可能だ。この特徴を活かし、現代社会が抱える状況を俯瞰できる視点を提供することを旨としている。作品の企画に応じて普段着のままのキャストを依頼することも多かったが、本応募作では、全てのキャストを自ら演じることにした。依頼が難しい状況でもあったが、動きを含めたキャストのデザインを重視したためである。
 現代社会においてネットワークの存在は大きい。コロナ禍によりその位置づけはより強固なものとなった。これを支えるデジタル技術は人々の可能性を大きく広げ、個人の発信力は飛躍的に高まったはずだ。しかし、日頃接する若者の中には、有力な情報にアイデンティティが揺らぎ萎縮する者も少なくない。発信の機会が増えるほど評価の対象になる(あるいは全く対象にならない)ため、個々の価値が白日の元にさらされるようなストレスを私自身も感じることがある。そんな状況を反映してか、ユニークな存在が目に止まるようになった。例えば「バ美肉」(バーチャル美少女受肉の略。アニメ系美少女になりすまし配信する男性youtuber)や「鬼女」(芸能人のたった一枚の写真から電話番号を探りあてる、特定班と呼ばれる女性)などのネットスラングで呼称される人々や著名人の失態をお祭り騒ぎにたたく「メシウマ」、ゲーム世界に入れ込みすぎる「ゲーム廃人」といった人々。おそらくは希薄な人間関係の中で距離を測りかねて萎縮してしまう「繊細さん」、自らの価値を持ち物やフォロワー数でしか計れず金銭に走る「(パパ活による)港区女子」などである。彼らの行動には批判的な意見もあるが、その是非はともかく現状に向き合っている姿は、道なき道に果敢に挑む先駆者と捉えることもできるのではないかと考えた。
「虚人苑」では、彼らの呼称からイメージを展開し、特撮怪人のような仮面を造形し扮装している。仏教宇宙をテーマパーク化したものが寺院であり、寺院を家庭サイズにミニチュア化したものを仏壇とするならば、「虚人苑」はネット宇宙を俯瞰する仏壇のようなものである。
 展示の際には、設置場所に応じた工夫をする。また仮面も展示し、状況が許せば装着体験していただきたい。

実行委員コメント

これは面白いビデオインスタレーション作品。電話ボックスのような箱の中に、仮面をつけて次々と立ち現れるネット系のさまざまなフリークスが登場するというシアトリカルな演出。すりガラスでぼんやりとしか見えない中でのパフォーマーの動きや、「バ美肉」「鬼女」「繊細さん」などのタイトルの入れ方まで完成度が高いです。かつてボイスチェンジャーをつかってすりガラスで暴露話をするようなバラエティも思い出し、下世話な除き趣味とポップアートが合体したようなオリジナルな面白さが素晴らしいと思います。

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